なみえの今

神楽でつながる

2019年12月28日

11月23、24日の2日にわたり、浪江町十日市祭が開催されました。あいにくの空模様でしたが、さすがに町最大のお祭りとあって、町内外からたくさんの方が浪江を訪れてくださいました。かつて十日市は、その年の収穫を祝ったり、本格的に訪れる冬を前に冬支度の道具を揃えたりする大切なお祭りでした。「子供の頃は十日市にならないと新しい服を買ってもらえなかった」と懐かしそうにお話くださる方の多いこと。大きなお祭りですから、屋内外の舞台も大賑わいです。そんな中、3行政区(南津島、大堀、室原)が舞台で神楽を披露しました。また、請戸地区の有志の方々行った安波祭写真展の会場入り口にも、田植え踊りの衣装と獅子頭が飾られました。

23日、室原のご出身で浪江町文化財調査委員会の副委員長をお務めの栃本勝雄氏と共に室原神楽を拝見させていただく機会に恵まれました。まずは室原の力強い「幕舞」をご覧ください。

苅野地区にある9行政区の中で、室原は唯一の帰還困難区域です。不動滝をはじめとした景勝地、義経と弁慶の伝説、6年に一度行われてきた八龍神社遷宮の伝統・・・室原の魅力を語ろうとすると言葉が尽きません。

みんなが散り散りに避難する中、十日市の神楽披露は芸能保存会が集まる数少ない機会となっている、と栃本氏は言います。「それでも震災の前に保存会を次世代につないでいたおかげで何とか継続してくることができた。」その保存会が震災後、室原への立ち入り許可を申請して、神楽や楽器、衣装などを持ち出して来たのだそうです。その時の写真を見せていただきました。

散り散りになった行政区がそれでも伝統を守ろうとしているその姿に、時空を超えた「つながり」を感じます。

「かつて震災前の十日市で、町内の神楽を集めて展示したことがあった」そう教えてくださったのは、同じく苅野地区・立野下行政区の芸能保存会会員、矢口一男氏です。「ずらりと並んだ神楽の様はかなり見応えがあった」と言って見せられた写真には、複数の神楽とその前に堂々と掲げられた各行政区の名前。

また十日市の会場にずらりと並んだ町内全ての神楽が見てみたい!そう思わずにはいられません。

舞台での舞を終えた室原神楽は、観客の皆さんに声を掛けました。「獅子頭に頭を噛んでほしい方は来てください」次々と人が集まります。噛まれた人は皆とても嬉しそう。かくして私も邪気を払ってもらいました。

もうすぐ新しい年を迎えます。初詣にお出かけの際に神楽を見たら、どうぞ頭を噛んでもらってください。そして地域の神楽に秘められた「つながり」について思いを馳せてみて下さい。